コラム

2024-11-13 令和6年4月より、相続登記の義務化が始まっています

家の持ち主が亡くなったとき、正式な手続きを経て登記簿上の不動産名義を変更することを「相続登記」といいます。この相続登記がなされないと、その家や土地は「所有者不明」となってしまいます。以前はこの「相続登記」が任意だったため、名義変更をしないまま家族が住み続けたり、誰も住まなくなった家がそのまま所有者不明空き家として放置されたりしていました。
 
しかし、近年そのような空き家が増えたことによって、放置された家が崩れたり草木が伸び放題になったりして近隣への悪影響を与えることが増えています。また、公共事業や民間の土地取引の際にも、所有者がわからない土地があるとその探索に多大な時間と費用がかかり開発が遅れるなど、様々な問題が発生しています。
 
これらの問題を解決するため、令和3年より法律が改正され、所有者不明土地の発生予防と土地利用の円滑化の両面から不動産登記制度の見直しが行われ、令和6年4月より相続登記が義務化されることになりました。

◎今回の法改正のポイント

相続登記義務化の主なポイントは以下の2点です
●相続したことを知った日から3年以内に登記する必要がある
●義務化前に相続したことを知った不動産は、令和9年3月末までに登記する

また、相続人同士で遺産分割協議が行われた場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記をする必要があります。
 
※正当な理由がないのに申請しなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります
※期限内に相続登記の申請をすることが難しい場合には、「相続人申告登記」により義務を履行することができます

◎相続登記の申請手続きには何が必要?

相続登記の申請のために必要な準備や書類は、相続人が複数人いる場合や遺言書がある場合など、それぞれのケースによって異なりますが、ここでは最も一般的と思われる「相続人同士で遺産分割協議を行った場合」についてご説明します。
 
〇夫婦と息子2人の家庭で夫が亡くなり、長男が不動産を相続することになった場合
このようなケースでは、以下のような書類を用意する必要があります。
・父の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本、原戸籍謄本
・母、長男、次男それぞれの現在の戸籍謄本
・父の登記記録上の住所と最後の住所のつながりを証明する住民票の除票、戸籍の附票
・不動産を取得する長男の住民票または戸籍の附票
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
・納税通知書のコピーまたは不動産評価証明書のコピー
 
これだけの書類を集めるのも大変なように思えますが、相続人が家族3人だけなのでまだ楽な方です。例えば祖父が亡くなって相続人がたくさんいる場合などは、全員分の戸籍や印鑑証明を集めるだけでも一苦労です。さらに、もっと前の代から相続登記がなされず、相続人も何代にもわたり増え続けた場合などは、すべての相続人を把握し連絡するのも大変な作業になります。
 
必要な書類の一覧や、申請書の様式や記載例などは法務省のホームページに記載されています。しかしこれだけの書類を集め手続きをすべて自分で行うには多くの時間と労力がかかるため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

◎相続登記をしないままでいるとどうなる?

相続登記を放置したままでいると「所有者不明土地」が増えてしまうという社会的な問題が発生するだけでなく、相続人にとっても以下のようなデメリットがあります。

①10万円以下の過料を科される
今回の法改正では、期限内に相続登記、あるいは相続人申告登記をしないと10万円以下の過料が科せられる規定があります。期限は「不動産の取得を知った日」、遺産分割により不動産を取得した場合は、「遺産分割が成立した日」から3年です。
②不動産の売却や担保提供ができない
不動産を売買したり担保提供したりするときには、実際の所有者と登記簿上の所有者は必ず一致していないといけないので、相続登記をしないまま手続きを進めることはできません。
③不動産の差押や共有持分を売却されるリスクがある
相続人の中に借金をしている人がいる場合、債権者は相続人に代わって法定相続による相続登記を申請して、借金をしている相続人の持ち分を差し押さえることができます。債権者はその持ち分を競売にかけ、見ず知らずの第三者に売り渡す可能性もあります。
④権利関係が複雑になり、相続登記が困難に
長期間にわたって相続登記をせずに放置した結果、いざその土地を処分しようという時に相続人の数が増えて権利関係が複雑になってしまいます。司法書士への依頼費もかさんでしまいます。

◎期限までに相続登記をするのが難しい場合は「相続人申告登記」を

相続の協議がなかなかまとまらない、申請に必要な書類を集めるのに時間がかかる、相続人全員に連絡がつかない等の理由で、期限までに相続登記をするのは難しい場合、「相続人申告登記」という方法があります。

「相続人申告登記」なら特定の相続人が単独で申出るだけで良く、提出書類も少ないことから、簡易に相続登記の申請義務を履行することができます。 ただし不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり担保にすることはできません。その場合は別途、相続登記の申請をする必要があります。

「相続人申告登記」について詳しくは、以下の法務省のサイトにてご確認ください。
法務省:相続人申告登記について

◎まとめ

今年から始まった相続登記の義務化について、ご説明しました。上記で述べたとおり、相続登記の申請には多くの書類と複雑な手続きが必要となり、相続人が1人で手続きを処理するのはかなり大変です。司法書士などの専門家に相談するのが良いと思います。
 
「ゼロ空き家管理」では、そのようなご相談を承ることも可能です。月々の空き家管理プランとは別途、お申し込みが必要となりますので詳しくはお問い合わせください。

参考:
政府広報オンライン「なくそう、所有者不明土地!所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります!」
法務省「不動産を登録した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」